- 最初の3日で主要三和音と転回の型を作る
- 1週目でダイアトニックと機能名を一致させる
- 2週目でII–V–Iと分数コードを運用する
- 3週目でセブンスと簡易テンションを追加
- 4週目で8小節伴奏を録音し磨く
ピアノコード覚える順番最短設計|基礎知識
導入:はじめに学ぶ道筋を一本化します。三和音の型→転回の移動→機能で整理→II–V–I→テンションの入口が最短です。情報の海を削り、鍵盤で再現できる順に積み上げましょう。
三和音の最短ルート:主要三和音から着手する
最初の到達点はI・IV・Vのメジャー三和音と、viのマイナー三和音です。土台は根音位置のブロックで良く、響きの輪郭を耳で覚えます。白鍵のキーでC→G→Fの順に触れると、早期に共通形が見抜けます。まずは両手でブロック配置、次に右手のみで分散、左手は根音で安定を作ります。
転回形で移動距離を短縮:第1・第2転回の役割
転回は「指の移動コスト」を下げる技術です。I→IV→V→Iの循環を、できるだけ近い位置でつなげる練習を繰り返すと、指番の癖が整います。特に第1転回でメロディの上声を保つ意識が有効で、弾き替えの濁りが減ります。転回を覚えると、同じ和音でも景色が変わることを体感できます。
機能で束ねる:トニックサブドミナントドミナント
和音名の羅列より、機能で三つに束ねると記憶が硬くなります。Iとviは安定、IVとiiは準備、Vとiiiは緊張。この「役割の物語」を頭に置き、8小節の中で安定→準備→緊張→安定の弧を描くと、置く場所の判断が速くなります。耳は役割の流れを先読みし、指は最小移動で追随します。
II–V–Iへの橋渡し:属の力で落とし所を作る
V単体よりもiiを加えたII–V–Iの流れは、可動域が滑らかで歌が立ちます。右手はガイドトーン(3rd/7th)を意識し、左手は根音または5度で支えます。三和音の型が固まっていれば、iiとVはすぐ作れます。耳が「戻る方向」を理解すると、進行の迷いが消えます。
テンションは入口だけ:9thと6thから色を足す
テンションは欲張らず、まずはadd9と6の二択に絞ります。Iやviにadd9、IVに6を足すだけで、音場が一段広がります。根本の進行が揺らぐなら外して構いません。装飾は骨組みの後、という順番の感覚を初期に刻むのが長期的な近道です。
学習ステップ
- I・IV・V・viのブロックを両手で固定
- 同進行を転回で最短移動に置き換える
- 機能名を声に出して8小節を設計
- II–V–Iをガイドトーン主導で接続
- add9/6のみを必要箇所に限定追加
ベンチマーク早見
- 主要三和音4種を10秒以内で提示
- 同進行を転回で2ポジ以内に保持
- II–V–Iのガイドトーンを視認弾き
- 8小節伴奏を60秒で設計口頭化
- add9/6の位置づけを理屈で説明
- 日次30秒録音で進行の濁りを点検
型→移動→役割→流れ→彩りの順が定石です。先に動線を細くし、後から色を足すと、迷いなく手が動き始めます。
メジャーから攻める順番:三和音とダイアトニックを同時取得
導入:まずはメジャー1調で骨格を作り、同形移動で他調へ展開します。C→G→Fと白鍵中心のルートは負荷が低く、I・IV・V・viの配置を最短で統合できます。表で構図を固定し、チェックリストで抜け漏れを消しましょう。
主要三和音→ダイアトニック:視覚と耳を同期させる
白鍵主体のCで、I・IV・V・viをブロックと転回で二重に覚え、次にii・iii・vii°を加えて全体像を俯瞰します。ここでメロディの最上声を固定し、和音を下で入れ替える練習をすると、歌心が崩れません。視覚は度数、耳は役割の流れ、指は最短移動を意識します。
C→G→Fの順に展開:シャープ系からフラット系へ
GはF♯一つ、FはB♭一つ。負荷の増え方が緩やかで、既知の形を少し変えるだけで通用します。新しい記号に出会うたび、ガイドトーンがどこに動いたかを声に出すと、他調でも見取り図を失いません。メロディの自然さを優先し、押さえは転回で最短距離に整えます。
短期の運用目標:8小節伴奏を組み立てる
ダイアトニックだけで8小節を作る課題を設定します。4小節目と8小節目はIで閉じ、2小節目か6小節目でIV、5小節目にVを置く骨格が扱いやすいです。右手は上声固定、左手は根音→5度の往復でリズムを作り、録音で濁りと音量差を点検します。
| キー | 主要三和音 | マイナー | 注意 | 推奨順 |
|---|---|---|---|---|
| C | C F G | Am | 白鍵のみ | 1 |
| G | G C D | Em | F♯追加 | 2 |
| F | F B♭ C | Dm | B♭追加 | 3 |
| D | D G A | Bm | F♯C♯ | 4 |
| B♭ | B♭ E♭ F | Gm | B♭E♭ | 5 |
| A | A D E | F♯m | F♯C♯G♯ | 6 |
ミニチェックリスト
- □ I→IV→V→Iを転回で最短接続
- □ 8小節でI閉じを2回作れたか
- □ 右手最上声を途切れさせない
- □ 左手は根音優先で拍頭安定
- □ 録音で濁り箇所に印を付ける
コラム:黒鍵が増えるほど不安になりがちですが、実際は「ガイドトーンの動き」は各調で同じ物語です。見取り図は度数で持つと、記号の増減に揺れません。
C→G→Fの三段ロケットで弾ける景色を広げましょう。形の再利用が効き、ダイアトニック学習が軽く回ります。
機能和声で覚える順番:役割から置き場所を即決する
導入:和音の名前より、トニック・サブドミナント・ドミナントの三役が肝です。機能を先に決め、転回で距離を詰めると配置が自動化します。数の暗記から、役割の即決へ移行します。
役割ベースの並べ替え:安定準備緊張の弧
8小節なら、1〜2小節は安定、3〜4小節で準備、5〜6小節に緊張、7〜8小節で安定に戻す弧を作ります。I/vi→IV/ii→V→Iの骨格に、経過でiiiやvii°を挟むと輪郭が立ちます。右手は3rdと7thを軸に、左手は根音で引力を示し、聴き手の期待を育てます。
ガイドトーン主導:3rdと7thを連結する
II–V–Iでは、iiの3rd→Vの7th→Iの3rdという半音連結が背骨です。指でその動きをなぞれると、どの調でも迷いません。ガイドトーンが滑らかなら、テンションを足しても濁りにくく、和声の移ろいが美しく現れます。
代理と借用の入口:IV→iiやI→viの言い換え
同じ機能内で和音を入れ替える代理は、手持ちの語彙を一気に増やします。IVの代わりにii、Iの代わりにviなど、まずは近い置換から。ローリスクで色だけを少し変えられ、伴奏に変化が出ます。借用は後半で触れれば十分です。
メリット
- 配置判断が速くなる
- 転回の選択が合理的
- 進行の説得力が増す
デメリット
- 最初は抽象度が高い
- 例外処理の学習が必要
- 耳と用語の同期に時間
ミニ統計(定着の指標)
- II–V–Iの3rd/7thの連結成功率80%以上
- 8小節で機能ラベルを口頭付与する速度15秒以内
- 代理置換を1曲につき2か所以上実施
よくある失敗と回避策
誤①:和音名暗記だけに偏る→回:機能の三分類で束ね、役割を先に決める。
誤②:転回を毎回ゼロから探す→回:上声固定の原則を設ける。
誤③:テンションで濁る→回:ガイドトーンが滑らかか先に確認。
機能→転回→装飾の順で判断を固定すれば、曲が変わっても迷いません。役割の物語が、手の動きを導きます。
セブンスとテンションを覚える順番:色は背骨の後に重ねる
導入:彩りの学習は属七(V7)から始め、II–V–Iに乗せ、次に分数コードで低音を設計、最後に9th/6th/susを段階追加します。増やす順を間違えなければ、濁りません。
属七の効能:解決の矢印を太くする
V7は3rdと7thが半音で求心的に動き、解決感を強くします。まずはCメジャーでG7→C、続いてGメジャーでD7→Gの流れを体に入れます。根音とガイドトーンの配置だけで十分に音楽が前へ進み、テンションがなくても説得力が出ます。
II–V–Iに載せる:テンポを落として連結訓練
Dm7→G7→Cmaj7の連結で、上声を3rd/7thに固定しながら半音で滑らせます。テンポは60から、録音で「滑り」を聴き取ります。慣れたら右手はドロップ2で掴み、左手は根音で支えると、伴奏として即戦力になります。
分数コードとテンション:低音で動きを描き色で輪郭
分数コードは低音を分離して動線を描く道具です。C/GやF/Cなど、ベースで流れを示すと、上声の選択が自由になります。テンションはadd9→6→9→sus4の順が扱いやすく、必要箇所だけに限定します。彩りは背骨を壊さない量で十分です。
習得ステップ
- V7→Iの解決を全キーで1往復
- II–V–Iで3rd/7thを半音連結
- 分数コードで低音ラインを設計
- add9と6を安全地帯に限定追加
- sus4で一時停止の色を学ぶ
- 録音比較で濁り箇所を削る
- テンポと音量差の安定を可視化
- 8小節伴奏に1〜2箇所だけ色付け
ミニFAQ
Q: テンションは何から? A: add9と6の二択。まず濁りにくい位置だけで十分です。
Q: 分数コードは難しい? A: ベースを先に決める設計です。C/Gのように安全な型から始めます。
Q: maj7は必須? A: 色付け目的です。Iでは自然、IVでは楽曲次第で使い分けます。
ミニ用語集
- ガイドトーン:3rdと7thの要成分
- 分数コード:低音を指定する表記
- テンション:9/11/13などの装飾音
- ドロップ2:上から2音目を下に落とす配置
- sus4:3rdを4thに置き換える一時的保留
- add:元の三和音に足すだけの指定
彩りは不要ではなく順番の問題です。V7→II–V–I→分数→addの順に重ねれば、濁らずに広がります。
左右の役割分担と伴奏型:ボイシング定着の順番設計
導入:覚えたコードを音楽にする段階では、左手は土台、右手は輪郭の原則が生きます。ボイシングと伴奏型を順番に積み、歌を支える設計へ進めます。道具は少なく、繰り返しで滑らかさを作ります。
左手の土台:根音と5度で拍頭を固定する
初期は左手を根音中心に、時折5度を加えるだけで充分です。拍頭で低音を明確に置くと、上の和音が多少揺れても全体は崩れません。分数コードの低音指定はこの延長線。音数を増やすより、響きの輪郭を太くする意識が奏効します。
右手の輪郭:上声固定と近接ボイシング
メロディの最上声を保ち、残りの2音で和音を近くに寄せるのが近接ボイシングです。転回を使い、指が過度に開かない位置を探します。ガイドトーンはなるべく連結し、add9/6で色を少しだけ足します。旋律が歌えば、和音は軽くてよいのです。
伴奏型の順番:ブロック→アルペジオ→シンコペ
ブロックで骨格→分散で流れ→シンコペで推進力の順が扱いやすいです。難しいパターンを追うより、録音でリズムの揺れを削る方が仕上がりは速い。歌の邪魔をしない音量配分を心がけ、ベースとメロディが前に見えるよう整えます。
- ベースは拍頭で明確に置く
- 右手は最上声を歌わせる
- ガイドトーンは半音で繋ぐ
- 分散は指の内側でまとめる
- シンコペは1箇所だけに限定
- 録音で低音の輪郭を確認
- テンションは多くて2種まで
- 休符で呼吸を作る
事例:弾き語りを始めたBさんは、左手を根音オンリーで1週間固定。右手は上声固定の三和音のみ。録音を毎日30秒続け、2週目にアルペジオへ移行。歌の聞こえ方が一気に改善した。
左土台→右輪郭→型の多様化の順で固めると、どの曲でも崩れません。シンプルは力です。
30日ロードマップと測定:覚える順番を練習計画に落とす
導入:知識は計画に落とすと定着します。日次30分を前提に、録音指標と復習サイクルを組み込みます。到達点を明確化し、迷いを削ぎましょう。
週ごとの到達点:段階目標で進捗を見える化
第1週は三和音と転回、第2週はダイアトニックと機能、第3週はII–V–IとV7、第4週は分数とテンションの入口とします。毎週末に8小節伴奏の録音を残し、先週との差を自己採点。数値と主観の両輪で軌跡を描きます。
日次ルーチン:短く多く回す
ウォームアップ3分、三和音と転回7分、ダイアトニック5分、II–V–I8分、伴奏録音5分、振り返り2分の配分で回します。迷ったら時計を見て割り切り、翌日に持ち越します。速度より頻度が定着率を押し上げます。
測定の指標:テンポと濁りと上声の明瞭度
テンポ安定±5%、濁りゼロの小節率80%、上声の音量比+3dBを目標に、録音を数値と耳で評価します。数が具体的だと、短時間でも集中が持続。課題は次回の最初に解き、小さな改善を積み上げます。
| 期間 | 主題 | タスク | 録音課題 | 合格ライン |
|---|---|---|---|---|
| 1週 | 三和音転回 | I/IV/V/vi転回 | 4小節×2 | 誤鍵1回以内 |
| 2週 | ダイアトニック | 機能付与 | 8小節×1 | 機能ミス0 |
| 3週 | II–V–I/V7 | 連結訓練 | 3連結 | 半音連結80% |
| 4週 | 分数色付け | add9/6 | 8小節×1 | 濁り小節20%以下 |
| 継続 | 伴奏整音 | 上声固定 | 30秒/日 | +3dB維持 |
ミニ統計(習慣化の目安)
- 録音日数/30日:24日以上で定着曲線が急上昇
- 1セッション平均28分で集中維持率が最大化
- 週1回の他調練で移調耐性が30%向上
チェックリスト
- □ 週末に8小節の録音を残した
- □ 3rd/7thの半音連結を説明できる
- □ add9/6の位置が言語化できる
- □ 濁り小節の原因を一つ特定
- □ 翌週の弱点1個を最初に置いた
計画×測定×記録で学習は加速します。小さな合格ラインを越え続け、1か月で伴奏の土台を固めましょう。
まとめ
ピアノコード覚える順番は、三和音→転回→機能→II–V–I→テンションの一本道に集約できます。最初はI・IV・V・viの四つで骨格、転回で移動距離を圧縮、機能で置き場所を即決、II–V–Iで流れを作り、add9/6から慎重に色付け。左手は根音で土台、右手は上声固定と近接ボイシングで輪郭、伴奏型はブロック→アルペジオ→シンコペの順に展開します。計画は30日で切り、録音と指標で濁りを削る運用に変えれば、短時間でも実用の伴奏が育ちます。今日の一手は、C調でI–IV–V–Iを転回で最短接続し、上声を固定した8小節を30秒録音すること。次にII–V–Iを1回だけ挿入し、add9を一箇所。順番を守れば、鍵盤の上で音楽が自然に前へ進み始めます。



